仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)75号 判決 1950年4月12日
被告人
寺田秀雄
主文
原判決中被告人寺田秀雄に関する部分を破棄する。
被告人寺田秀雄を懲役六月に処する。
訴訟費用中原審並びに当審における被告人寺田秀雄の各国選弁護人に支給分は全部被告人寺田秀雄の負担とする。
被告人寺田秀雄に対する昭和二十四年三月二十九日附追起訴状による公訴はこれを棄却する。
理由
被告人の私選弁護人成田善三郞(その後辞任す)の控訴趣意について。
原審が原判決判示第二事実認定の証拠として挙示している証拠中の蛯子竹次郞作成の被害始末書以外の各証拠(同副検事聴取書とあるのは同副検事に対する供述調書の誤記と認める)によれば被告人が原判決判示第二の判示日時判示蛯子竹次郞方家人不在中金品窃盜の目的で同家座敷の箪笥等から同人所有の同判示現金等を取り出している時に同人に発見されてその目的を遂げなかつた事実を認定することができる。
原審は被告人が原判決判示第一の判示日時原審相被告人寺田雄造と共同して同判示場所で判示金品を窃盜したとの事実を認定しこれを前段認定事実(原判決判示第二事実)と併合罪として量刑処断していること原判決によつて明らかである、しかして右事実は被告人に対する昭和二十四年三月二十九日附追起訴状記載の公訴事実であり右追起訴状による公訴提起当時被告人が十八歳未満であり少年法第六十八条第一項にいわゆる少年に該当するから被告人に対する右窃盜被疑事件については検察官において同法第二十条、第四十二条、第四十五条第五号により家庭裁判所の手続を経由した上公訴を提起しなければならないのにかかわらず本件記録によるも右被疑事件について右所定の手続を経由したことを認め得ないからこの点に関する本件公訴提起は少年の重大な利益を害するものであり無効といわなければならない。しからばこの点に関する本件公訴は刑事訴訟法第三百三十八条第四号にいわゆる公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるときに該当するから原審においてよろしく判決をもつてこの点の公訴を棄却すべきにかかわらず前記のように有罪認定処断したのは同法第三百七十八条第二号にいわゆる不法に公訴を受理したものといわなければならない。